要介護認定、調査項目は74
 要介護認定の一次判定ソフトの改定に向けて議論している「要介護認定調査検討会」(委員長=開原成允・国際医療福祉大大学院長)が8月8日に開かれ、厚生労働省は前回示した23調査項目の削除候補のうち、「外出して戻れない」「大声を出す」など9項目を残して14項目を削除することを提案し、了承された。これにより、9月から開始するモデル事業に使用する調査項目は、最終的に74項目となった。
 

介護サービスの内容を決めるために必要な「要介護認定」をめぐっては、一次判定に使用する調査項目の見直しが課題となっていた。利用者の実際の状況と違って軽度に判定される場合があるなど、要介護認定の一次判定に使用するコンピューターのデータが古いことや、調査項目が多いため調査員の事務負担を軽減する必要性があることなどが指摘されていた。

 このため、同検討会は一次判定ソフトの改定に向けてモデル事業を行うための調査項目について議論。前回、厚労省は23項目の削除候補を示したが、「介護給付費の抑制が目的」との批判もあった。今回、厚労省は23項目のうち9項目を残すという“妥協案”を示し、調査項目に関する議論はひとまず決着した。

 厚労省は、9月下旬に全市区町村を対象にモデル事業を実施し、来年4月から新しい認定制度をスタートさせる予定。

 前回、厚労省が提案した削除項目は、周辺症状(問題行動)に関する14項目と、それ以外の9項目の計23項目。今回、調査項目として残すことが決まったのは、周辺症状に関する14項目のうち、▽外出して戻れない▽一人で出たがる▽収集癖▽物や衣類を壊す▽作話▽感情が不安定▽同じ話をする▽大声を出す▽落ち着きなし―の9項目。

 厚労省は、調査項目を選定する方針として、▽介護認定審査会に提出される主治医意見書に記載されている項目を代用することができる▽主治医意見書に記載されていない項目のうち、特に周辺症状に関する項目については、介護認定審査会への情報提供という観点から認定調査項目に含める―としている。

 老健局の鈴木康裕・老人保健課長は、23項目を削除してもケア提供時間の推計などの妥当性には差がないことをあらためて説明。調査項目の削減は、「給付を抑制するためではない」と強く否定した。その上で、「調査項目の変更などによって『要介護1』の判定が影響を受けてしまうことは、われわれの意図とは違う。認知症があれば『要介護1』になることはあらためて確認させていただきたい」と述べた。

 【要介護認定】

 要介護認定は、サービスの給付額にも直結する介護保険制度の核となる重要な仕組み。介護サービスの利用申請を受け、申請者が要介護や要支援状態にあるかどうかなどを、「一次判定」と「二次判定」の2段階で判定する。一次判定では、認定調査員が心身の状況を把握する「認定調査」と主治医の意見書を基に、申請者の状態をコンピューターで総合的に判断。二次判定では、保健・医療・福祉の学識経験者らで構成する介護認定審査会が、一次判定の結果と主治医の意見書に基づき実際の要介護度を認定する。

 現在の認定ロジックは、2001年に実施した高齢者介護実態調査のデータを基に組み立てられた。しかし06年4月の介護保険制度の改正で、従来の「要介護1」が「要支援2」と「要介護1」に再編されたほか、軽度者対象の「新・予防給付」が新設されるなど様変わりしたため、認定ロジックの根拠となる調査データが古過ぎて新制度に対応できていないなどの指摘もあった。こうした状況を受けて同検討会では、要介護認定のうち一次判定の見直しに向けて協議してきた。


更新:2008/08/11 14:26   キャリアブレイン