9割の事業所「介護職不足」
 平均賃金が全産業の一般労働者の6〜7割にとどまるなどワーキング・プア¥態にあり、離職率が2割を超えている介護職員について、90%を超える訪問介護事業所が「不足」としていることが3月19日までに分かった。介護職員が足りないうえ、応募状況が少ない事業所の割合も94%に達している。今後10年間に約40〜60万人の介護職の確保が必要と見込まれる中、地域の介護体制はますます深刻な事態に直面していることが裏付けられた。

 3月15日に東京都内で「介護フォーラム2008」を開いた実行委員会が、東京23区や三多摩地域などを対象に実施した小規模事業所へのアンケートで明らかになった。101の事業所が回答した。

 現在の職員数は99事業所が回答。常勤職員では1人が13施設、2人が25施設、3人が14施設と、常勤3人以下の事業所が52.5%を占めた。職員の充足状況(101施設が回答)では、「不足している」が92施設で全体の91.1%に。職員の応募状況については、「少ない」が95施設と94.1%に至り、「まったくなし」も3施設あった。

 介護保険法は2006年4月に改正。これに伴い、78事業所の5,698人のうち1,442人が「新予防給付」に移行となり、訪問介護や福祉用具の利用に制限が加わった。また、利用者の40%以上が「新予防給付」になった事業所が12か所のほか、利用者の3分の2が「新予防給付」になった事業所もあった。

 改正の影響に関しては、「経営が厳しくなった」が85施設と84.2%に上り、「改善した」は1施設のみだった。

 経営が厳しくなったと答えた事業所に対し、「経営を見直した点」について尋ねたところ、「ヘルパーの賃金などを見直し」や「経費の節減」が上位を占めたほか、「ケア内容を短時間で行えるよう工夫」、「自費サービスの範囲の拡大」などが寄せられた。なかには「これ以上の経営努力は無理」という回答も見られた。

 改正にかかわる利用者や家族からの訴え・苦情をめぐっては、「新予防給付になり、今までのサービスが受けられない」が20件、「日中は独居で生活援助が受けられない」が14件あったほか、「改定について行政の説明が足りない」という意見も寄せられた。

 改定による不利益の具体例では、「本人は膝や股(こ)関節に異常があり、家事は難しいものの、家族が同居しているため、要支援(という認定)ではヘルパーによる生活支援を受けられない」、「糖尿病で認知症だが、散歩を自費で頼む金銭的余裕がない」などといった利用者(家族)のケースが報告された。また、介護職員に対する不利益では、「収入が大幅減となった」や「通常の人の倍は働かないと生活が厳しい」のほか、「減収で生活ができず、介護職を辞めた」という深刻な事態も寄せられた。

 介護保険に関する要望では、「介護報酬を引き上げ、職員が生活できるように」が最も多く、「利用者の生活実態を見た制度にしてほしい」、「制度自体の見直し」を求めるものが続いた。

 介護労働安定センターの2006年の調べによると、介護職員の離職率は20.3%に達し、全産業平均の17.5%を上回っている。平均賃金は全産業の一般労働者の6〜7割の水準にとどまり、離職者の平均勤続年数も1年未満が42.5%に至っている。こうした中、多くの介護福祉士養成施設で定員割れが生じているほか、卒後の進路として介護分野を選択しない学生が増えている。

*介護保険法改正

 2006年度の改正では、介護度の度合いとして、従来は「要支援」と「要介護1」から「要介護5」までの計6段階に分類していたものを、要介護1のうちの改善の可能性が高い人を「要支援2」と「要介護1」に分け、「要支援1、2」が「新予防給付」の対象者になった。「要介護1〜5」が「介護給付」の対象となり、「要支援1」・「要支援2」のほか、「要介護1」も含めて、訪問介護や福祉用具の利用に制限が加わった。


更新:2008/03/19 19:19   キャリアブレイン