重度障害者の訪問介護が深刻に
 NPO法人(特定非営利活動法人)「DPI(障害者インターナショナル)日本会議」や全国障害者介護保障協議会などでつくる「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」は6月26日までに、重度障害者の訪問介護サービスなどについての実態調査(中間集計)の結果をまとめた。重度障害者の訪問介護は、身体介護などと比べ、報酬単価が低く設定されており、人材確保が極めて困難で新規の利用者を受け入れにくいことが明らかになった。

 調査は、全国の重度訪問介護事業の事業者や利用者、ヘルパーを対象に実施。5月26日までに回答があった事業所54か所、利用者151人、ヘルパー877人について集計した。

 人材不足については、職員の離職率が20%を超えている事業所が約半数を占めたほか、30%以上の事業所も約3割あった。ヘルパーを募集しても、面接にまで至るのは月平均2.3人で、年間の採用数は14.8人にとどまるなど、重度訪問介護の人材確保が困難を極めていることが浮き彫りになった。

 人材確保で事業所が困難に感じていること(複数回答)については、重度訪問介護が長時間に及ぶ上、身体介助全般を必要とすることから、同性による介護を求める利用者が多く、「男性の応募が少ない」が最多の52事業所に上った。続いて、早朝や夜間に勤務するヘルパーが少なく、「時間帯により(勤務できるヘルパーの数に)偏りがある」(44事業所)、「泊まりの介護をできる人がいない」(39事業所)などだった。

 ヘルパーの労働実態では、常勤職員の平均月収が約21万円にとどまり、昇給についても常勤職員の約4割が「なし」と答えるなど、厳しい環境に置かれていることが分かった。

 収支については、3割超の事業所がマイナスと答えた。

 利用者への影響では、ヘルパーの離職率の高さと人材確保の困難などで、新規利用の受け入れに困難を来す事業所が多く、昨年一年間の新規利用が2人以下だった事業所が6割近くを占めた。このうち、新規利用がなかった事業所が約2割あった。

 自由意見を見ると、利用者からは「事業所に電話しても、『できない、やれない』などと断られた。サービス提供責任者と話すこともなく断られると、『死んでもいい』と思うときがある」、「泊まりの介助をしてくれるヘルパーが辞めることになり、代わりの人を探すのに半年以上もかかった」という深刻な訴えがあった。

 また、事業所からも「土曜や日曜などには、泊まりを含むヘルパーの勤務シフトに見通しが立たないことがある。月末になると、その繰り返しで精神的・肉体的な負担が大きい」との悩みが寄せられた。

 

 

更新:2008/06/26 15:54   キャリアブレイン