| Ⅰ． １５．３．０３． 初 Ⅱ． １５．３．２３． 追加 １ Ⅲ． １５．７．１５． 追加 ２ |
||||||||||||||||||||||||
| 『体験談の作成に思うこと』 | ||||||||||||||||||||||||
| 私は６６歳です。３年１０ヶ月前脳梗塞で倒れて自宅でリバビリをしています。でもやっと回復途上にあります。 しかし、左脳の損傷のため失語症に苦労しています。「失語症」という言葉自体聞いたことがない方が普通だと思います。なにしろ今「失語症」についてお話しようしている私もこの疾患に罹る前には全く無縁でしたから、この単語を知ったのは入院して相当経ってから、おそらく入院から５ヶ月経ってから、他の入院患者が面会に来た人と話をしているのを横で聞いて、はじめてその単語を知りました。しかし、当時は実感がなく余り意味が分かりませんでした。 と言う事は、私が相手（医師、看護婦、病院の看護の関係者、家族という特定で限られた少数）に私が喋ったことが通じていないことさえよく理解していなかったのです。 そんな訳で、健常者はただ単に”脳疾患で言葉が喋れない症状”と思いがちですが、実の処、障害者手帳では障害程度３、４、で認定されている重い現実があります。世の中には当事者が考えているよりズット深い見識を持ち実践をしておられる方々が大勢いることは、この問題を考えるときの前提ですが、私は若いとき仕事に詰まると上司によく言われましたが、俗に”見明き千人、めくら千人”で誤解や偏見も出会っています。しかし、一番大切な事は、この疾患に罹った当事者の対応を受けいれて頂けないと「失語症」の定義が分かって頂けないと思いますし、回復途上のあるリハビリにも先を見とおす心の拠り所になることは当然なことで、いま、私が主張したい事の主旨はここにあります。 私は医学の専門家ではないし、よくある情報を収集家でもないから、他人の事をいくら書いても喋っても、所詮実感のない文章の羅列に過ぎません。そんな話しは読む人が退屈するでしょう。私は発病した当時、何が何やら全く分からず途方に暮れていました。ただ不安ばかりでした。今から思うと質問をする気力もないし、答えてくれる適当な相手もいない、と言うより、受け入れ側の家族などの周囲の人たちと私の貧困な要求表示とのジレンマに落ち込んでいたと言うのが客観的な判断だったと思いますが、それは今の状況分析で、 当時は孤独感がひっしと身に迫るものがありました。 少しづつ回復に向かううち、矢張り残った人生を思うと、”今後どれだけ回復が可能のなのか”・・・この不安はどうしようもない問題ですが、それに答えてくれるところが殆どないと言うのが現状ではないでしょうか。私の貧しい情報収集能力では、辿りついた結果は余り数のないホームページでした。やっとここで、いろいろなことを知りました。特に、同じ病気で苦労した方々の体験談は参考になりました。私は、これしかないとも考えました。そこで過去の反省に立って私は、ホームページを勉強し拙いながら、私も発表しますが、どなたか発表してもよいという方がありましたらご連絡ください。 |
||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||
| 失語症とは 『 脳卒中・脳梗塞や頭部外傷により脳の冒されたとき、その場所や大きさにより、半身麻痺（まひ）・言語機能の障害などの後遺症が発症してきますが、その内「失語症」は、左脳の言語領域が冒されたとき発症するのです。
|
||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||
| 『私の体験談』ですが未だ回復の途上にある（本人の希望的見解ですが）と思います。何時の日その後の経過報告をしたいと思っています。 荒井 正夫 |
||||||||||||||||||||||||
 |
||||||||||||||||||||||||
|
私は脳梗塞になる以前は年齢に相当する体力の低下は常日頃感じておりましたが、特別な病気にも罹らないで、一般的には健康と思っていましたが、その頃持病の糖尿病の管理を怠っていたいう、明かに私の過失で、済みきった晴れた日の４月３０日、突然倒れ、後は気が付いた時は家族の付き添いのもと集中治療室のベットの中でした。しかし，主治医の勧めがあり、国外の息子も家族全員集められましが、幸いにも非常事態を脱し、準集中治療室を経て一般病棟に移りました。
この病院は救急指定病院でしたので約４０日で山梨の温泉病院に移りました。この間は精神的に不安定で何かを思い出すと紙とエンピツを要求し、何か一生懸命に書きつづけ後になっては文字も絵も分からないものばかりです。 再入院した病院は同じ患者が多くリハビリの施設が整っていて、毎日時間は違っても言語と生体の練習がありました。私はこの頃からつくづく私の病気の恐怖を感じました。窓から外を見て、私もあのように歩けるのか半ば疑問を持ちながら途方に暮れていました。残り少ない人生に廃人という翳を見ました。 私の言葉が相手に伝わらない事もはっきり認識しまいたし、カレンダーの文章が読めないことも確認しました。それは大変なショックでした。そして、毎日３０分の言語の時間の他宿題がありました。小学校三年生程度の国語と算数のドリルブックをやるのですが、それが出来ないのですからどうしょうもないのです。掛け算は難しくって到底出来ません。情けないと思いましたね。これが、変革期にある教育環境から脱出し、従来からの自己の教育理念と実践的ノウハウを現実に社会に如何に適応できるかそのアイデンティティーを身をもって問う為に、定年を待たず退職した尊大ぶった物理教師の成れの果てでした。一つの人生の終焉の宣言でした。 また、毎夜、不思議にはっきりした夢を見るのです。それは、もう忘れてしまったと思っていた昔の私の小さい頃の、声さえ聞こえて来るような鮮明で躍動感のある夢なのです。”ローマの鎧戸の饗宴”といった感じでした。もともと健康のときに夢には悩まされていましたが、以前は私は夢は単なる記憶の紊乱と割りっきていましたが、そうとはいかなかったのです。 |
||||||||||||||||||||||||
| 平成１４年度春季テニス大会（６/２）のときの表彰式で撮影した記念写真の一部を切り取っていれた写真です。 | ||||||||||||||||||||||||
| しかし,病院の対応、数日毎の面会・介護のお蔭で着実によくなって来たようで、車椅子から歩けるようになり、言語の先生は何回かに検査の結果から予想以上に回復が進んでいるので、この病院にいても話し相手がいないので（私は個室であった）退院して家族のもとに戻ったほうが良かろうと退院を勧められました。 退院したのは９月で、周囲の人たちは順調な回復を祝ってくれました。しかし、私は不安から開放されませんでした。まず最初に、入院を知らせてない方から何枚かの暑中見舞いがありましたが、それの返事を出したいと思ったがどうしても文章が書けず、それでも家族の協力で１通書くのに３日かかりました。 そからが失語症の苦しみの体験そのものでした。やつれていても見かけは普通の人間ですから、周囲の人たちは私の対応に訝るのです。何時もの駅で、忘れ物をしたので一寸改札口を出して貰いたいと手振りで伝えてたが”傘”という言葉がなかなか出て来ない。いらいらして血圧が上がるのが分かるがどうしようもない。その時の駅員がよい人で決して急かせず柔和の表情で待ってくれたのは何よりの幸運でした。 しかし、もともと人に会ったり会話をする機会を避けていたのですが、そうでない事も時々ありました。例えば、私の息子に郵便口座に入っている入金を受け取って来て貰いたいと云う話が出ましたが、勿論私はそんなだいそれた事はとうてい出来ないと断りましたが、妻は必要な書類はすべて角封筒に入れてあるから、何も喋らなくても問題はないと、余り熱心に言い、中目黒の郵便局の所在地の説明をしました。私は、初め迷っていましたが、其処は時々生体治療に行く所に近く地理はよく分かっていたので、それで気が楽になり渋々出かけました。 ところが、当地と着いたところその建物から郵便局が移転いていて移転先が分らず周囲を歩きましたが、仕方がないので己むを得ず通り沿えの飲食店の入り口で準備をしている若い店員に訊ねました。「郵便局は何処にありますが？」。扉のガラスを拭いていた店員は手を休め、怪訝そうに、そして次には不愉快をあらわに、「何を言っているのか分らない。よそで聞いてくれ」と言う返答の後、振り返っては貰いませんでした。「郵便局」・「郵便局」・・・と何度か発音し、妻は「分りますよ！」と励まして呉れたのに、又道々くちずさみて来たのだけれど、用が足りず帰った場合にその説明に窮する場面が想像し、直ぐには帰れず、聞く事もできず、恐らく移転先は遠くはないと思い、一度ならず周囲を徘徊しましたが、諦めて来た道より遠回りの道を選んで行きますと、偶然、新しい郵便局の前に出て事無きを得ました。 私は少しでも前向きの体験を勧める妻の心根が痛い程分り、逆に自分の能力を越えたピエロを噛み締めました。 そう言う事ですから、散歩に出かけるときは、常時、必要最低な情報をメモ用紙に書いて持っていました。 特に、もちろん云うまでもないことですが、始めから分かっている品物を近くのコンビニに買いに行くのにもメモは欠かせないもので、品物が見つからないときには、黙ってメモ用紙を見せて買うのですが、それまではよいのですが、お金を払うときになると、計算がよく出来ませんでしたから、黙ってコイン入れを開きお金を取って貰うか、殆どは１万円札を出すことにしています。消費税がありますから、細かい数字が入っていて、とくに２品分になると計算にトラブってパニックになってしまいます。 ですから私が買い物から戻った後は決まって小銭が集まります。 しかし、計算ができないことの自覚が私にとってたいへんなプレッシャーでした。以前、私の思考の根幹には常時私なりの数列を組み込んだ方程式がありました。諸コミュニケーションの効率的執行には歴史や文化に立脚した論理的構造的な条約があり、それを如何に構築するには客観的数列であるとよく話をしました。今になってそのファイルを見つけ出したいとの希望がありましたが、それを積極的に推進する意欲はありませんでした。 最近のことですが、そんなある日、失語症友の会でバス旅行に行った帰り”海老名”のサービスエリアで休憩に入りました。皆さんそれぞれに店内に入りお土産等セッセと買っていました。私も皆さまの流れに従い店内の商品を見ていましたがその中の魚の干物が目に留まりました。 食事制限をしているので昔懐かしい香りに誘われ正札をよく見ると、８３０円となっていました。私は小銭入れを開いたときある種の興奮を感じました。その中に丁度適当なコインが入っていたのです。自ら選んで店のカンウンカーの並べることは常に私の脳裏にある念願でありましたので。 しかし、私の並べた商品とコインを一瞥した若い女子店員の不機嫌そうな素振りに対して（忙しいので当然なのかも知れませんが私にはそう感じたのです）訝る私に、一語、「お金が足りないじゃないですか」‥これは私にとっては厳しいダメージでした。何時も通り１万円札で払うしか対処の方法がありませんでした。 ”よせばよいものを…”、悔恨が残りました。そんな経験は以前では気にならない事でも、特に他人が関係していると単なる間違いでは済まない事がよくあります。テニス連盟の若い理事と打ち合わせの際レストランで食事の後レジカウンーで代金を払うとき私は必要の金額３千円を出した筈なのに彼が財布を出したのでビックリして聞いたところ、１千円足りないと言う。金銭のことは信用にかかるので矢張り全ての支払は慎重にするため万札に限ることを自ら確認しました。 言葉がよく言えないだけではなく、記憶を失い推理力が減退して思考の混乱が起こっているのを無意識に感じていましたからです。特に固有名詞が大変で、私の住まいは”代官山”ですが、その名前も直ぐには言えないし、”原宿”、”恵比寿”も音が絡まってなかなか発音出来ませんでした。 私は時々思いだしたときに、中央線や山手線の駅名を口ずさみましたが、巧くはいきませんでした。時々、中東の“イラク”は”イクラ”と語の配列が飛ぶこともしばしばありました。また、人名は凄く難しく、今でも発音に最も苦労します。当時は”石川”という最も一般的な名称もでてきませんでした。”清水”は”しつみ”と言ってしまい”しみずとは横で介添えの人が直して、更に反復練習すると、その場は言えるが一寸時間が経つともう同じ事になります。 しかし、勿論、特定な言葉の文字を書く事はできました。 ある時千駄ヶ谷駅前からバスに乗りたいと思いバスの停留所に行きましたが、乗り口が道路を挟んで２つあり、”澁谷”はどちらか判断ができず、また聞こうと思いましたがとっさのことで言葉が出てこず、慌てて手に持っていた用紙に”澁谷”と書いて指し示しましたが、運よく停留所でバスを待っていた初老の乗客が私の様子をお察しして頂き、無事に澁谷行きに乗ることができました。 でも実際のところ肢体の痺れがあり歩行に不自由でも何でも何しろ外に出たいいう一念、と言うより何も出来ない現状で、闇雲に外出していました。疲労と痛みが私の焦燥感のモルヒネ効果になっていました。 そこでも、また、街中の風景を見たとき私の認識に馴染まない阻害感を感じていました。 私は視力は両目とも１．２で恵まれていますら、何処に行ってもその風景（状況）印象はそのまま残るのですが、まして以前から他の人以上に好奇心の強い私にしては、全くと言ってもよいくらい平板な無味乾燥な画像しか残らないのです。視野が狭くなったいうのではないのです。つまり、そこそこの建物とそれを形作る色々な材料や家具、ウインドウとその中に並んだ色とりどりな商品、樹木、街路、動く人、佇む人、空、そして空気…その関連性と遠近法の感覚が機能を失い私の存在感が希薄になった感じでした。今になって思い出しますが、子供の頃逆立ちして足の平を壁に付けて風景を見たとき普段見慣れているものとは違って見えるのを発見したことがありました。どうもそれによく似ていると思えるのです。当時はその変化に戸惑うより新奇な経験として遊びに取り入れましたが、今では脅威でした。 そんな状態ですから、ある日デパートに妻の買い物に付いて行きましたとき、おそらく室内照明の関係が大きいとは思いますが、視界に入るものが何もかも別世界に迷い込んだようで孤立感に包まれました。誰もがパントマイムを演じるかのように冷ややかで私は透明人間になって周囲を彷徨している感じでした。なかでも恰幅の立派な男性の小麦色の顔色は浅黄色の上着に鮮やかに映え、その姿は周囲の人たちと相まって、私は彫塑の群像のなかにいる畏怖を感じました。鏡の間の虚像に会っていました・・いうことがより適当と思うんです。 また、テレビを視聴するとき普段は何の支障もありませんが、サスペンスでは組み込まれたややこしい人間関係は理解出来ないことがあります。中でも頻繁にはいるコマーシャルメッセージ（ＣＭ）は転換の速さは勿論ですが、次々と変わる各画像やコメントの関連性とその主張点が理解できず、いつも仲間はずれにされた思いでいました。 さらに、新聞を開いたときは問題がありました。１つは単語が読めないものが結構あり、それを聞き写して、家族の者に聞いて発音をしましたが長くは続きはしませんでした。そのメモ用紙が残っていたのですが回復に向かううち紛失したようです。２つ目は、文章を読んでも殆ど内容が理解きでませんでした。“俺はこんなに頭が悪いなー”・・諦めの溜息がでました。 体の状態は余り芳しくなく右肢、右腕・手・指等主に右側の障害が気になる生活で、階段の登り下りが不安定で怖いと言う状態で、休養の時間が長くかったのですが、気分のよいときには、”西郷山公園”、”有栖川公園”、”明治神宮と代々木公園”、目黒川沿いの公園を散歩していましたが、何しろ人との接触がないのを気にして妻が同行することが普通でした。 この間、通院している病院（自宅に帰ってから最初にかかった病院）の言語士のアドバイスにより「みなとの会」に参加し、そこで地元の失語症の会も行くようにまりました。すべてが受身の対応でしたから余り気の進まないものでしたが、妻は積極的に私が参加できるように準備し、渋々ながら参加しました。なにしろ、発言の順番が回ってくると何かを喋らなければいけないのですから、その時間が嫌でだまらないと思っていました。 相変わらず言葉にはさして進展がなく、先触れたように固有名詞、なかでも人名の発音には特に苦労しました。最近知り合った人の苗字が”平林”さんとい方の名前を、どういしても正確に発音出来ず、何回も何回も咀嚼しと、やっと事で自分に妥協でくるまで言葉作りを繰返しました。これでは気後れして会話にはなりませんね。以前、私の顧問をしていた演劇の仲間たちのなかで親友たちが、同じ苗字の仲間を親愛の情を込めて揶揄って云ったときの若い晴れやか情景を毎回思い出しましたが、漢字では鮮やかに想い浮かべるのですが、まったく表現形式になりませんでした。 「てーらばらし か ひらりん か 一つ八つのとっきき 一八十のもくもく」（意味が分りますか？） こうこうしているうち、時が経過しました。年が変わって秋になりました。私は休んでいたテニス連盟の大会を見学に行きました。それは古い会員から苦情があった事となるべく早く復帰したいという希望があったのですが、そこで対面したことはいかにも辛いものでした。私の高校生のとき辛い療養生活の経験をしみじみと語って下さった先生の机の上には”人は袖に涙のかかるとき人の心の奥ぞ知られる”と言ったような内容の文章が置いてあったことを、昨日のように心の奥に焼きついていますが、其の侭、先生の語りを再現する気持ちでした。人がよくもこんなに変われるものだと思わなかった・・・率直な感想でした。しかし、結果的には時間をかけてトラブルは収拾されいまは順調に機能していますから、明かに失語症が原因ではありますが、個人の事情に関わる事ですから割愛します。その経過の携わっていた関係者は今の私に会うと皆ビックリします。それ程、周囲の人たちから見れば回復が進んでいると評価して下さいます。 周囲の人たちから見て以外に早い回復と云われるのは、私にとっては重要なことですが、健康食品を使用した効果であると思います。しかし、それは回復促進効果ですから、宣伝と誤解される虞がありますので割愛します。 しかし、私はパソコンのスイッチの入れ方も忘れてしまい、やっとパソコンが動いたのを見た時は何かほっとしました。それが今から１年３ヶ月前(約発病から２年８ヶ月）でした。ところが、私が病気の前に使っていたソフトは一太郎でそれもヴァージョンの低いもので、私はワードやエクセルを聞いて混乱しました。 パソコンの世界は日進月歩、操作が分からず、これも壁につきあたりました。 しかし、それ以前に文字を私の頭の中に見つけることに苦労しました。 自分が発音した音がどの文字なのか分らないことが多くあり,またそのつど声を出しても確認できず埋まっている沼からの発掘と言う感じでした。時間にしては分りませんが、私にとっては長い息苦しい沈黙がありました。 さらに文字を書く・作成する際には同様ですが、特にパソコンの場合は文字を打ち込むとき文字の発音が分からないと文字を作ることが出来ませんね。そんなことは当たり前のことですが、実は失語症者にとってそれが大変なことでした。人によって違うようですが、例えば私の場合、「午後１時」と書こうとしても、「こ」と「ご」の違いが分からない,つまり、「午後」は「ごご」、「ここ」、「こご」、「ごこ」のどれかと判断出来ないのです。仕方がないのでこの４つの組み合わせを作って変換すると言うやり方をしました。つまり、自分で発音出来ない文字は作成出来ないのですから、「住所」という単語は漢字では簡単ですが、キーから「ｊｕｕｓｙｏ」と拾うのは随分難しいことでした。なにしろその１年前には私の辿々しい発音では「病院」と「美容院」が分からないし、その秋公園で「蝙蝠」（こうもり）と虫の「コオロギ」（蟋蟀）の発音の違いが分からないのですから、仕方がありません。《*今でも「旅行」（ｒｙｏｋｏｕ）と「余興」（ｙｏｋｙｏｕ）の違いを使いこなせません》。 最初は一行書くのに平均すると１時間かかりました。 発音の出来ない単語は常にありその都度辞書で探しました。 しかし、辞書で分るのはほんの一部で殆どの場合は避けて通りました。 （例えば「梅雨」と言う文字を出そうとした時どうしても「ばいゆ」と思っていて、それ以外の言葉が脳裏に思い中るものがなく、仕方なく辞書を開きましたが、先入観からか、又、元々文字を目で追う集中感がないことがこの疾患ですから、一向に分らずしまいで、そのうち文字の輪郭の判別がし難くなり、「ば」や「ま」も混同しパニック状態になり、最後は辞書のなかで明らかにそれと違う分かる部分を一つづつマーカーで消してやっと見つけたのが「ｂａｉｕ」（梅雨）で、余り疲労してしまい、これに懲りて自分の発音がおかしいと思う語彙を使うことを避けました。） そう云う状態での試行錯誤の日課が続きました。 しかし、（「しかし」が多いですね。ご容赦ださい）、日本語は難しいです。「技術」（ｇｉｊｙｕｔｕ）、「美術館」（ｂｉｊｙｕｔｕｋａｎｎ）、「左右」 （ｓａｙｕｕ）、「苗字」（ｍｙｏｕｊｉ）、「支出」（ｓｉｓｙｕｔｕ）・・・ｅｔｃ。 その中でも「手術」は大変です。漢字で書くのは造作もないけれど、パソコンで「ｓｙｕｊｕｔｕ」と設定することは至難なことで、今は妻に入れてもらい漸く出せました。 形容動詞は文字があっちこっち飛んで、自分自身パニックになってします。 これまでの文章で失語症について要約すると、私は、以下にコピーしてありますこのＨＰの「クリスマス」の中に言及しましたが、表面に写った失語症の症状は、私の経験的帰納で分かってきた事は大別すると、２種類あると思うようになりました。 『私の思惟は、演繹･帰納する思考・推理する為に脳機能を構成する基本的な素子が、まさに水飴やコールタールのような粘性抵抗の高い沼に埋没し柵の拘束から出られないのです。それは今まで組み合わせや解体をして新しい企画・造形（建築、遊び）をやっていた分子ブロックの部品をみんな重油の中に落としてしまい、その中で作業をするのと似ていると,私には思われます。言語は単なる意志の伝達の道具ではなく、抽象思考・想像の形成に介在するためには不可欠なものですから、繰り返しになりますが、｢失語症」は「言葉が言えない」と言う事は、必ずしも発音できないと言うのではなく、記憶を失ってその言葉が頭に浮かんで来ないと言う意味があります。 よって、この障害者との対応は健常者には奇異に見えるでしょうが、本人は狼狽してしまいます』
普通１の状態が、最も「失語症」らしい表情ですから、２の「忘れる」と言うこうとを理解が注目されない嫌いがあります。私は「失語症」という名称が当事者として実感をもって分かります。語呂が良くないようですが、特徴的症状に拘らないなら、「記憶喪失」と云う言葉が一般的に使われていますから、「失語症」でなく「失機能症」と言いたい気持ちです。 この頃、私は自分では常識と思っていたことが、修正しないと間違えなのかと迷っています。その一つは、「漢字」と「ひらかな」・「かたかな」の関係です。小学校に入ると先ず、「かたかな」・｢ひらかな」の「かな文字」から勉強します。漢字は他の２つより難しく高度なもので、実際に漢字検定はありますが「ひらかな」検定などありません。それは云うまでもありませんね。「かな文字」検定では、なにしろ単純過ぎて試験問題がすぐ底をついてしまうでしょう。しかし、この文字に対峙するとき、パソコンを媒介装置にすれば、人間の情報手段である文字うち、そのルーツが象形文字である「漢字」と表音文字の「ひらから」・「かたかな」の性質の違いは歴然として存在することを実感します。「漢字」は画像であり、「ひらかな」・「かたかな」は音を確認出来ないと使用不可能な表現形式ですから、健常者と違い「漢字」の方が「かな文字」より余程使い易いのです。 余り長くなりましたので、今回はこれで止めます。時間を執ってもう一度修正したいと思っています。 平成１５年３月３日 |
||||||||||||||||||||||||
| 追伸 特に、最近、中国の方が理解出来ない、つまり日本人が作成した和製漢字が、臨場感をもって私の意識に快い薫を届けてくれます。 内陸ではあまり馴染めがなかったのはないでしょうか、私たちの生活には最もポピラーなあの”いわし”、鰯 は、中国には一文字で表現する文字はなく、そのままでは傷み易いことから平安時代我が国で出来たと聞いた事があります。同様に、”つじ”、辻 、”しずく”、雫 、”しつけ”、躾 、”とうげ”、峠 、また鱈（たら）、魚＋雷（はたはた）等寿司屋の湯のみに並んでいるの幾つかの文字等など、それぞれの意味を合体して合成された文字は、画像ゆえに、無味乾燥な枯葉のような仮名と違い、あたかも生活の歴史を蓄積した生命感があり、彷彿されていた過去の自分に新奇な感覚を呼び戻します。 ”しずく”、”ひずく”、”しづく”との違いに戸惑うのは避けたいのは今も変わりませんから。 すべて失語症後の経験です。 ０４．１０．０１．
|
||||||||||||||||||||||||
追加１へ戻る 追加２へ戻る 戻る トップへ戻る |
||||||||||||||||||||||||